研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS
(東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。
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第50号のダウンロードページ
『保存科学』は主に自然科学的見地に立脚した、文化財保存に関わる当研究所の調査や研究成果を公表する目的で発行されている紀要です。当誌は昭和39年の発刊以来、着実に発行を重ね、本年3月末に第50号を公表するに至りました。当誌の歴史は、まさに国内における“保存科学”の歴史そのものであると自負しております。なにしろ、発刊当時は文化財保存に自然科学の手法を導入するという考え方そのものが定着しておらず、従って“保存科学”という言葉も全くと言っていいほど世間に認知されておりませんでした。現在、この言葉が広く知られるようになったのは、先輩方の絶え間ない努力と苦労によるものであり、我々はそれを引き継いで、これからも“保存科学”が社会にとって有益な学問であるために尽力しなければと思っている次第です。『保存科学』は印刷部数が限られているため、冊子体では関係機関などへの配布のみとなっていますが、幅広く接していただくために、第1号からの全ての掲載記事をPDF版としてインターネット上で公開しております。第50号についても先日より公開を始めました。ご関心のある方は是非アクセスし(http://www.tobunken.go.jp/~hozon/hozon_pdf.html)、我々の活動の一端に触れていただくことを切望いたします。
アルメニア歴史博物館内考古遺物収蔵庫での調査の様子
文化遺産国際協力センターでは、文化庁委託『文化遺産国際協力拠点交流事業』の一環として、「コーカサス諸国等における文化遺産保護のための協力」を開始します。今年度はアルメニア歴史博物館を拠点とし、金属や染織品の考古遺物の保存修復に関する人材育成・技術移転を行う予定です。
アルメニア共和国には歴史上大変貴重とされる資料が数多く存在するにもかかわらず、資金・人材・教育機関・情報などの不足により、調査研究や保存修復が思うように進んでおらず、文化財保護分野の人材育成と技術移転において海外からの支援を強く望んでいます。
2011年4月3日(日)~13日(水)、準備ミッションを派遣し、博物館を管轄する文化省関係者との協議、アルメニア歴史博物館の保存修復施設や収蔵庫の視察、そこで働く保存修復専門家達と具体的な研究協力内容について直接話し合いを行いました。
その結果をもとに、現在、アルメニア側との合意書と覚書締結準備、およびアルメニア歴史博物館所蔵の金属・染織考古遺物の保存修復と自然科学的調査についてワークショップや共同作業を開始する準備を進めています。
左から高栁管理室長、田中企画情報部長、亀井所長、浅木代表取締役社長、下條理事長、(株)水戸幸商会 吉田代表取締役
東京美術商協同組合から東京文化財研究所における研究成果の公表(出版事業)の助成を目的として、また(株)東京美術倶楽部から東京文化財研究所における研究事業の助成を目的として、それぞれ寄附金のお申し出がありました。
3月4日、港区新橋の東京美術商協同組合で会談し、昨今の文化財に関する話題から画材に関する話題まで、多岐にわたるご質問、期待の言葉などをいただき、当研究所の調査・研究に対する期待の大きさが感じられました。会談後、今回ご寄付いただいたことに対して、東京美術商協同組合下條啓一理事長並びに(株)東京美術倶楽部浅木正勝代表取締役社長にそれぞれ亀井所長から感謝状を贈呈しました。
当研究所の事業にご理解を賜りご寄附をいただいたことは、当研究所にとって大変有難いことであり、研究所の事業に役立てたいと思っております。
田中淳による基調講演「創作と評価―萬鉄五郎《風船を持つ女》を中心に」
ディスカッションの様子
前月2月27日の当研究所での開催に引き続き、『美術史論壇』30号および『美術研究』400号を記念する日韓共同シンポジウム「視線の「力学」―美術史における「評価」」が、3月12日にソウルの梨花女子大学校博物館の視聴覚室を会場として行なわれました。
当研究所企画情報部長の田中淳による基調講演「創作と評価―萬鉄五郎《風船を持つ女》を中心に」に始まり、東京会場と同じく綿田稔(当研究所企画情報部)「山水長巻考―雪舟の再評価にむけて」、張辰城氏(ソウル大学校)「愛情の誤謬―鄭敾への評価と叙述」、江村知子(当研究所企画情報部)「江戸時代初期風俗画の表現世界」、文貞姬氏(韓国美術研究所)「石濤、近代の個性という評価の視線」の発表が続きました。
折りしも前日に起こった東北地方太平洋沖地震の被害を海外で案じながらの開催となりましたが、会場は立ち席が出るほどで東京会場をしのぐ盛況ぶりでした。鄭干澤氏(東国大学校)の司会によるディスカッションでは、個々の発表への質疑応答にくわえ、日韓の美術史研究のスタンスの差異にも話題が及び、国境を超えた国際シンポジウムに相応しい討議となりました。
『日本絵画史年紀資料集成 十五世紀』
企画情報部では、五年にわたった研究プロジェクト「東アジアの美術に関する資料学的研究」の成果報告として『日本絵画史年紀資料集成 十五世紀』(A5判、720頁)を刊行しました。本書は室町時代の盛期にあたる15世紀の100年間に、主として日本で制作された絵画に記された銘記類のうち、年銘をともなうもの833件を翻刻し、年代順に集成したものです。また昭和59年(1984)刊行の『日本絵画史年紀資料集成 十世紀〜十四世紀』の続篇となります。
文化財に直接書き込まれている銘記類は、文化財の鑑識や制作年代の決定などについての基礎となるだけでなく、銘記を欠く多くの作例の位置づけについての指標となるものです。これを集成することは文化財保護や文化財研究の基礎基盤となると同時に、とかく細分化されがちな研究の再統合を促し、新たな視野を提供するものであることは疑いありません。このような事業は、当研究所が継続的に担うべき重要な責務のひとつであると言うことができると思います。
なお、本書は中央公論美術出版より市販されています。詳細は下記ホームページ等をご覧ください。
http://www.chukobi.co.jp/products/detail.php?product_id=582
『研究資料 脱活乾漆像の技法』
平成18年度から5か年計画の企画情報部研究プロジェクト「美術の技法・材料に関する広領域的研究」の一環として、天平時代の脱活乾漆造の仏像の技法解明を目的に調査研究を行ってきました。その成果報告として『研究資料 脱活乾漆像の技法』を刊行いたしました。本書では表面観察からだけでは窺うことのできない像内の様子や構造を知るために行ったX線透過画像を含む図版(モノクロ)とともに、各作例の基礎データを収載しています。あわせて、この研究プロジェクトの一環として同時進行でおこなってきた「奈良時代史料にみえる彩色関係語彙データベース」をCD版で作成し添附いたしました。
企画情報部の研究プロジェクト「高精細デジタル画像の応用に関する調査研究」の一環として、平成22年より奈良国立博物館と「仏教美術等の光学的調査および高精細デジタルコンテンツ作成に関する協定」を結び、奈良国立博物館と共同で行った大徳寺伝来の「五百羅漢図」の調査・研究の成果として、『大徳寺伝来五百羅漢図 銘文調査報告書』を刊行しました。本書では、これまで肉眼では判読が難しかった画中の銘文の可視画像化をすすめたものを収載しています。本書の刊行により銘文のほぼ全貌が明らかとなり、大徳寺伝来の五百羅漢図の制作事情の解明に向けて、大きな成果をあげることができました。
平成16年から17年にかけて平等院と共同で行った鳳凰堂仏後壁の調査成果の報告書として、『平等院鳳凰堂 仏後壁 調査資料目録 ―蛍光画像編―』を刊行いたしました。これは平成20年度に刊行した『同―カラー画像編―』、平成21年度に刊行した『同―近赤外画像編―』に続く、第三冊目にあたります。この三冊の刊行によって今後、鳳凰堂仏後壁の研究を行ううえでの基礎資料となることが期待されます。
『東京文化財研究所蔵書目録8 漢籍編』
企画情報部の研究プロジェクト「専門的アーカイブの拡充(資料閲覧室運営)」の一環として2002年3月に『東京文化財研究所蔵書目録1 西洋美術関係 欧文編・和文編』を刊行して以来、順次刊行を進めてきた蔵書目録の第八冊目にあたる『同目録8 漢籍編』を刊行いたしました。これは東京文化財研究所が所蔵する約12,000冊の漢籍を収録した目録で、この目録の刊行により研究所所蔵の漢籍の全容が明らかとなり、広く活用されることが期待されます。
会議の樣子
この国際セミナーは、ASEAN10カ国+日・中・韓3カ国で構成される、”NETWORKING OF EAST ASIAN CULTURAL HERITAGE(NEACH)”の枠組みで定期的に行われているもので、今回はマレーシアがホスト国となり、2011年3月5日から8日にかけてクアラルンプールで開催されました。今回は無形文化遺産がテーマであり、日本からは無形文化遺産部の宮田が招聘され、“Documentation and Archiving of Japanese Intangible Cultural Heritage”というテーマで発表を行いました。参加した各国は、無形文化遺産保護条約に関しては締約国・非締約国の別はあったものの、総じて無形文化遺産保護の必要性に関する意識は高く、活発な意見交換がなされました。無形文化遺産部では、今後もこうした機会には積極的に参加し、日本の経験を広く発信したいと考えています。
図版頁(『横笛細工試律便覧』)より
平成18年度から始まったプロジェクト「無形文化財の保存・継承に関する調査研究」の成果報告書を刊行しました。
本書では、江戸時代の笛製作に関する技法書『横笛細工試律便覧』、文楽義太夫節の曲節を分類整理した実演集『義太夫節の種類と曲節』、江戸小紋の歴史と製作工程を記した『江戸小紋技術記録』、以上3点の無形文化財の保存・継承に関する資料を紹介しています(ホームページ上でも全頁のPDFを公開する予定)。
講義の様子
平成24年度より、大学の学芸員養成課程において「博物館資料保存論」が2単位の必修科目になります。これは、学芸員を目指す学生に、自然科学的基礎をベースとした資料保存に関する知識を求めることを意味します。しかし、同課程を持つ大学や短大は、現在300を超える一方、この科目に即応出来るだけの専門性を有する人材は限られているのが現状です。そのため、専門外の教員が担当することになり、講義の構成や内容づくりに戸惑うケースが続出するのではと我々は考えました。そこで、開講に向けた準備に役立てていただくことを目的とし、3月8日から3日間、表題の講座を開催し、同科目の担当ことが決定した方を対象に、特に保存環境に関連する15コマの講義を行い、必須となる内容についての情報を提供しました。講座には、大学教員や非常勤での担当を行う学芸員など、全国から81名が参加しました。今回はじめて、このような講座を開いたことで、参加者からは好評をいただいた一方、多くの方が持っている戸惑いを我々は強く感じました。これまで、このような方々との関係は決して密なものではありませんでしたが、これからは保存環境を研究する部門として、積極的に関わっていかなくてはならないと実感しました。
大戦中、レジスタンスの破壊工作により脱線したという状態を再現した展示(フランス・ミュールーズ国立鉄道博物館)
修復作業中の観光潜水船(スイス・ルツェルン交通博物館)
整然と並んだ自動車(フランス・ミュールーズ国立自動車博物館)
道路標識を外壁のアクセサリーとしている(スイス・ルツェルン交通博物館)
保存修復科学センターでは、3月8日(火)から14日(月)まで、フランス及びスイスにおいて鉄道、自動車、及び航空機等の保存、修復に関する現地調査を、またドイツにおいて、溶鉱炉の保存現場の調査を実施しました。フランスにおいては、ミュールーズにて国立鉄道博物館及び国立自動車博物館の調査を実施しました。ともに収蔵している鉄道車両及び自動車の数は相当数に及びその多さは目を見張るものが有ります。鉄道車両に関しては、展示環境も余裕を持った配置になっており、鉄道関連博物館によく見られる狭苦しさが感じられませんでした。各鉄道車両に関しては、屋内に保存されている事もあり、保存状態は良好でした。塗装については、やはり来館者の目を意識してかきれいに塗り直されており、その点は多少残念では有りました。しかしながら展示の仕方にも種々の工夫が見受けられ、リピーターを呼べる施設だと感じました。自動車博物館については、元々個人所蔵の自動車がベースになっているせいか、どれもきれいで自動車好きの人にはたまらない博物館という感じです。もちろん保存状態もかなり良いのですが一点だけ、タイヤの保存状態に関して、かなりの車が直接タイヤで支持している状態が見受けられタイヤの傷みが気になりました。スイスでは、ルツェルン湖のほとりに立地する交通博物館の調査を実施しました。2000平米を超える敷地の中央に子供達が遊べる広場を配し、周りに展示館を廻らせた博物館で、交通に関する事物を収蔵しており、かなり見応えのある博物館です。ただ、全体としては、やや雑多な感じは否めませんが、一カ所でこれだけのものを見る事が出来るのは幸せな事だと思います。展示物に関しては、やはり鉄製のものが多く、来館者が触る部分の防錆に苦労しているようです。最後にドイツにおいて製鉄所を調査しました。ヨーロッパでよく見るスタイルですが、ほとんど操業を終えたそのままの状態なので、ある意味非常に興味深い施設ではあります。唯一手を入れているのは観覧者の安全の為の施設(手すり、エレベーター、歩廊)であり、その他は手つかずの状態で見る事が出来るのは非常に興味深いし、面白いものだと感じます。日本ではやはり、火災等の避難経路等、法律上の制約が多く難しい部分が多々有ります。その辺、保存の仕方や法制度などなお、検討の余地が多いと感じました。
平舞台下に曝露中の試験体
保存修復科学センターでは、厳島神社大鳥居の修復材料について研究を行っています。高温・高湿、水への浸漬、塩類の存在など過酷な条件のそろう臨海環境下で用いることのできる材料を選定し、現在、室内での強制劣化試験と現地での曝露試験を行っています。2010年の6月に現地曝露を開始し、現在、2ヶ月おきに試験体の含水率測定と劣化状態観察を行っています。今後も同じように試験を続行し、2011年度には強度試験等により劣化状況の確認を行う予定です。併せて、室内での強制劣化試験では紫外線照射試験と冷熱繰り返し試験を行っており、2011年度には塩水噴霧試験も行う予定です。
3月3日から5日までの3日間の日程で、イラク、シリア、レバノン、ヨルダン、バハレーンのアラブ5カ国の専門家を東京文化財研究所へ招き、日本の専門家と共に各国の文化遺産、その保護の現状について情報を交換し、今後の日本を含む各国間の連携による国際協力による保護活動の可能性について討論する会議を開催しました。文化遺産国際協力センターは、アジアの各地域について、文化遺産保護のための地域内ネットワークの構築と、日本の貢献を促進することを目ざし、中央アジア(2007年度)、東南アジア(2008年度)、東アジア(2009年度)の各地域の国々による国際会議を開催してきました。今回の会議は、これまで主に考古学や歴史研究での交流が盛んだった西アジア地域について、今後文化遺産保護という視点から新たなネットワークを構築していくための貴重な一歩となりました。
講演会の模様
2011年3月11日(金)に標記総会および講演会を開催しました。総会では、コンソーシアムの平成22年度事業報告と、次年度事業計画が報告されました。これに続いて開催した講演会では、欧州の文化遺産保護のために活動するNGOであるヨーロッパ・ノストラの副会長ジョン・セル氏にご講演いただきました。はじめに、多言語や複雑な政治体制などヨーロッパの多様な文化が育まれた背景と、今日の文化遺産保護に係る条約や政策についての説明がありました。続いて、震災を受けたイタリアのラクイラなどにおける危機遺産保全キャンペーンや、優れた保存活動等を顕彰するヨーロッパ・ノストラ・アワードなど、ヨーロッパ・ノストラの活動についてご紹介いただきました。長年に亘って、文化遺産保護に関する連携・協力を推進してきたヨーロッパ・ノストラの経験は、文化遺産国際協力コンソーシアムの今後の活動の在り方を考える上でも大いに参考となりました。
洪善杓氏による基調講演「国史形美術史の栄辱―朝鮮後期絵画の解釈と評価の問題」
ディスカッションの様子
2月27日に、当研究所において表題にあるシンポジウムを開催しました。『美術研究』(1932年創刊)は、当研究所企画情報部が、また『美術史論壇』(1995年創刊)は、星岡文化財団韓国美術研究所が刊行している学術誌です。韓国美術研究所長の洪善杓博士は、『美術研究』の海外編集委員を委嘱している関係から交流があり、実現したシンポジウムでした。当日は、はじめに洪博士の基調講演があり、韓国側からは、張辰城(ソウル大学校)、文貞姫(韓国美術研究所)両氏に発表願い、また当研究所からは、綿田稔、江村知子の両名の発表があり、その後ディスカッションが行われました。美術史における「評価」という重要な問題をとりあげ、意見交換する機会となりました。
なお、3月12日には、同じ発表者による、韓国ソウル市(梨花女子大学校)にてシンポジウムを開催する予定です。
ドレスデン工科大学のグルネワルド教授の講演
2011年2月25日に、東京文化財研究所セミナー室で「文化財施設の環境解析と博物館の省エネ化」に関する研究会を開催しました。現在、地球温暖化の問題から、あらゆる施設で温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みが必要になってきています。博物館、美術館等の施設に関してもこの例外ではありません。博物館、美術館等の施設では、文化財を安全に後世へ伝えていくために、それを取り巻く環境を良好に保ちながら、施設の省エネ化を図っていくことが必要です。今回は、ドイツの建物の省エネ化に関するプロジェクトで環境解析を担当しているドレスデン工科大学のジョン・グルネワルド教授には、「ドイツにおける建物の省エネルギー化と環境解析技術」、同じくドレスデン工科大学のルドルフ・プラーゲ博士には、「環境解析に関わる建材の物性測定法」というテーマで講演頂きました。プラーゲ氏の講演では、ベルリンのウンター・デン・リンデン通りの大理石の石造彫刻の劣化と周囲環境の解析についての話題提供もありました。また、清水建設株式会社の菅野元衛、矢川明弘、太田昭彦さんには、「文化財施設内の環境解析のための気流シミュレーション技術と応用事例」というタイトルで、環境解析手法および根津美術館の収蔵庫の改修の際に行った解析事例の紹介を頂きました。参加者は、全部で50名であり、活発な意見交換が行われました。
討議の様子
文化遺産国際協力センターでは2月2日・3日の2日間にわたり、「海外の文化財保存修復専門家養成を目的とする国際研修等の実施に関する研究会」を、東京文化財研究所会議室にて開催しました。本研究会は、当センターが行っている「諸外国の文化財保護に係る人材育成」事業の一環として、国際研修のより効果的かつ実践的な実施に向け、国内外の研修実施機関との情報共有および意見交換の場として企画したものです。途上国を中心とする外国からの研修生を対象とした保存修復技術や能力開発の研修に焦点をあて、プログラムの具体的内容や教授方法、さらには研修成果の評価法や問題点などについて、海外4機関および東文研を含む国内3機関の担当者から報告を受けたのち、これらを踏まえて参加者による意見交換を行いました。
研修実施事例の分析を通じて、いくつかの共通課題が浮き彫りとなりました。主なものとしては、研修事業自体のマネージメント、研修の継続性とプログラム同士の相互連携、研修情報の共有などが挙げられます。このようなテーマでの研究会は従来あまり行われてきませんでしたが、今後も様々な機会を通じて、研修方法の改善や多国間での相互連携の可能性などにつなげていきたいと考えています。
王の墓といわれるナン・ダワス
ミクロネシア連邦政府側との打ち合わせ
干潮時遺跡調査
文化遺産国際協力コンソーシアムでは2月18日から25日まで、ミクロネシア連邦のナン・マドール遺跡を対象として協力相手国調査を実施しました。この遺跡は6世紀から16世紀の間につくられたと伝えられており、92もの人工島とその上に建つ建造物からなっています。現在でも遺跡の全容は解明されておらず、神秘の遺跡といわれています。今回の調査は、遺跡の現状を調べるとともに、遺跡保護のために何が必要か把握し、我が国の協力の可能性を検討することを目的として行いました。
玄武岩の石柱を重ねてつくられた建造物には、崩壊した部分も多く見られました。その要因としては、自然風化やマングローブなど植物の繁殖が影響していると考えられます。さらには近年の温暖化にともなう水位上昇により、満潮時に水没する遺跡も見られました。このような点について今後詳細な調査を行い、管理計画を策定する必要があると考えられます。同時に、遺跡保護に関する現地の人々の理解を促進することも不可欠でしょう。いくつかの島や建造物は王の墓や祭儀場であったと伝えられています。遺跡そのものを守るとともに、このような伝承も含めた包括的な保護を図る必要性を強く感じました。